薬物相互作用 (27―がん化学療法における制吐剤の 薬物 ..


悪心・嘔吐には、抗癌剤や放射線治療に伴う治療関連因子以外にも、患者関連因子がある。患者関連因子としては年齢、性別、アルコール摂取量が挙げられ、女性、50歳未満に発現頻度が高く、アルコール摂取量が多いと発現頻度が低いと報告されている8-10)。また、癌患者では、下記に示す病態で悪心・嘔吐を生ずるので注意が必要である。


治療)に比べて、制吐効果が上回っていた(急性嘔吐でリスク比:1.26、遅発性嘔吐 ..

2) 渡部智貴,半田智子,加藤裕久.日本国内の臨床試験に基づく抗がん剤の催吐性リスク分類.癌と化療.2015; 42: 335-41.

一度、重度の嘔吐を経験してしまうと、抗癌剤レジメン治療変更後も嘔吐性事象で苦しむケースが散見されるため、嘔吐が発症する前 (抗癌剤投与前) より、しっかり制吐剤を使用していくことが重要である。
悪心に対しては、CINV (chemotherapy-induced nausea and vomiting) であるのか、消化管粘膜障害であるのかの見極めが重要になる。後者の可能性が高ければ、プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー等の制酸薬の効果が、制吐剤よりも期待できることがある。
また、味覚障害、嗅覚障害が食欲不振につながるケースもみられるが、ここでは栄養士による栄養指導が効果的な場合もある。ケースに応じて様々な職種による患者サポートを行うことが非常に効果的であり、推奨される。

制吐療法におけるデキサメタゾン投与の問題点として,ステロイド誘発性糖尿病や骨 ..

以前よりわが国では,経口抗がん薬のうちフッ化ピリミジン薬の使用頻度が高く,大腸がんにおけるUFT/ロイコボリン,カペシタビン,胃がんにおけるS-1,肺がんにおけるUFT は比較試験により術後補助薬物療法の有効性が示されている。また,切除不能再発胃がんや大腸がんに対しても,S-1 やカペシタビン,UFT/ロイコボリン,大腸がんにおけるTAS102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)は,ガイドラインで推奨されている治療の一つである。これらの経口抗がん薬は単回での催吐性リスクは少ないが,連日内服による消化器症状がある。

がん薬物療法においては,がんに対する適切な治療方針のもとで選択された薬物療法の治療強度を維持しつつ,患者の副作用を極力最小限にしながら,安全に実施することが医療従事者のstate-of-the-art とされている。しかし,抗がん薬投与後の患者の副作用には個人差があり,個々の患者に発現する種々の苦痛症状に対しては個別対応が必要となる。がん薬物療法を提供する医療従事者は各種支持療法に精通する必要があり,十分な支持療法を実施することで患者の日常生活を守り,治療成績の向上を図ることができる。

制吐作用を発揮すると考えられている。錐体外路症状はハロペリドールと比較して.

1) 佐伯俊昭.制吐薬適正使用ガイドラインに関するアンケート調査.癌と化療.2015; 42: 305-11.

がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐は患者が苦痛とする代表的な副作用であり,制吐療法はがん薬物療法を完遂するうえで極めて重要な支持療法である。がん薬物療法によって生じる悪心・嘔吐を制吐療法により抑制することは,患者QOL を向上させ,治療を適切に維持し,最終的には全生存期間の延長が期待できる。しかし,制吐療法にはがん薬物療法を維持できる益の部分と同時に,有害事象,通院等の患者の生活上の負担,薬剤のコストといった望ましくない害の部分もあることは明らかであり,益の明らかでない制吐療法は行うべきでない。

吐のマネジメントを行った前後比較試験がある。病態に応じて選択した制吐薬によ

「悪心」は“嘔吐しそうな不快な感じ”と定義され,延髄の嘔吐中枢に向かう求心性迷走神経刺激により発現する。「嘔吐」は“胃内容の強制排出運動”と定義され,胃幽門部は閉ざされたうえで,下部食道括約筋の弛緩,横隔膜や腹筋の収縮により,胃内容が排出される。なお「空嘔吐」は“胃内容は排出されないが,強制的に排出しようとする運動”と定義される,。これら嘔吐中枢への入力刺激としては大脳皮質(頭蓋内圧亢進,腫瘍,血管病変,精神・感情など),化学受容体(代謝物,ホルモン,薬物,毒素など),前庭器(姿勢,回転運動,前庭病変など),末梢(咽頭-消化管・心臓・腹部臓器などの機械受容体,消化管などの化学受容体)がある。

悪心・嘔吐が起こるメカニズムを に示す。上部消化管に優位に存在するセロトニン3(5-HT3:5-hydroxytryptamine 3)受容体と第4 脳室最後野の化学受容体引金帯に存在するニューロキニン1(NK1:neurokinin 1)受容体が複合的に刺激され,最終的に延髄の嘔吐中枢が興奮し,遠心的な臓器反応が起こることで悪心・嘔吐が引き起こされると考えられている。化学受容体で作用する神経伝達物質としては,セロトニン,サブスタンスP,ドパミン,ヒスタミン,アセチルコリン-ムスカリンなどが知られており,これらの化学受容体と拮抗する薬剤が制吐薬として用いられている。


また5―HT3受容体拮抗薬とは異なった作用機序で制吐作用を発揮するアプレピタントも遅 ..

現在, 抗がん薬の副作用である悪心・嘔吐の評価方法としては, CTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Event) v4.0-JCOG が用いられているが,これは制吐療法の評価方法ではない(→)。従来のわが国の制吐療法における臨床試験では,悪心・嘔吐が「ない」,「我慢できる」から,「ほとんど食べられない」といったチェック項目を患者に提示して個々の治療効果を示してもらうなどの方法がとられていた。最近の臨床試験では,がん薬物療法施行後0~120 時間の完全制御割合,0~24 時間の完全制御割合(急性),24~120 時間の完全制御割合(遅発性)などが評価項目として用いられている()。しかし,医療者は過小評価の傾向が指摘されており,悪心・嘔吐の予測がどの程度できているかの評価も重要である。また, 患者自身による主観評価にあたる Patient-Reported Outcome (PRO) の重要性も認識されてきており, がん臨床試験における患者の自己評価に基づき, 有害事象評価の正確性と高い精度のグレーディングを追及したツールとしてPRO-CTCAEが公開されてきており(), 日常診療として客観的評価とどのようにして関連づけて評価していくか等に関する検討が必要になるであろう

従来制吐療法群(アプレピタント+デキサメタゾン+グラニセトロン).

軽度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,制吐薬3 種類(5-HT3受容体拮抗薬,デキサメタゾン,ドパミン受容体拮抗薬)を単剤で使用することが勧められているが,最小度リスクに対する制吐薬の予防的使用は推奨されていない。一方,NCCN ガイドライン2017 では,軽度・最小度リスクの経口抗がん薬を含めて,悪心・嘔吐が生じた際にメトクロプラミド,プロクロルペラジン,5-HT3受容体拮抗薬などの連日投与(必要に応じてオランザピンやロラゼパムを併用)が推奨されている。しかし,経口抗がん薬に対する制吐薬の比較試験がないため,これらの推奨される制吐療法の信頼度は低い。ただし,これらの経口抗がん薬の有効性のエビデンスを示した比較試験のプロトコールをみると,Grade 2 の悪心・嘔吐が発現した場合にはおおむね支持療法を行うかまたは休薬し,支持療法によってコントロールできない場合には,投与量を一段階減量する,さらにGrade 3 の悪心・嘔吐が発現した場合は,投与量を一段階減量することが一般的である。したがって,がん薬物療法のエビデンスを示した臨床試験のプロトコールを参考に,日常臨床で使用されている薬剤を使用するほか,食事の工夫,カウンセリングなどの支持療法を実施し,コントロール不良の際は休薬し,抗がん薬を一段階減量して再開するという原則を守り,Grade 3 以上の悪心・嘔吐を発現させず,Grade 2の悪心・嘔吐が継続しないように内服を継続することが求められる。

ラインでオランザピン・パロノセトロン・デキサメタゾンの 3 剤併用も同様に制吐対策として.

がん薬物療法により誘発される悪心・嘔吐の発現頻度は,使用する抗がん薬の催吐性によって規定される。本ガイドラインでは,海外の制吐療法ガイドラインと同様に,種々の臨床試験で示された催吐性を考慮し,制吐薬の予防的投与がない状態で抗がん薬投与後24時間以内に発現する嘔吐の割合に従って以下の4 つに定義した。

通常、予防的な制吐療法は推奨されない。 軽度・最小度催吐リスク (経口薬)

催吐性は抗がん薬の種類,投与量,併用抗がん薬によって異なり,本ガイドラインでは に示すようなリスク分類を行っている。ほとんどの薬剤は単剤での分類となっているが,乳がん領域で多く使用されるアントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドはともに中等度催吐性リスク抗がん薬であるが,両者を併用する場合は高度催吐性リスクに分類している。また,多くのがん薬物療法では多剤併用療法が用いられており,使用薬剤の中で最も高い催吐性リスクの抗がん薬に合わせた制吐療法が推奨される。具体的には,原発臓器別の治療レジメン一覧(→ 参照)を参考としていただきたい。また,新規抗がん薬を検証する臨床試験においては,ガイドラインで推奨する制吐療法と異なる制吐療法が使用されることもあるが,その新規抗がん薬を投与する際には臨床試験で用いた制吐療法を行うことは許容される。

吐き気・嘔吐を引き起こす可能性が高い抗がん剤治療には多くの場合、制吐剤が組み合わされています。

また,高度・中等度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,5-HT3受容体拮抗薬,副腎皮質ステロイドの2 剤併用が推奨されている。NCCN ガイドライン2017 では,5-HT3受容体拮抗薬の経口連日投与が推奨されているが,シクロホスファミド,エトポシド,テモゾロミドでは,日常臨床において治療目的や放射線治療併用のために副腎皮質ステロイドが併用されていることが多い。

デキサメタゾン(DEX)の3剤併用標準制吐療法を施行することが推奨されています。 ..

抗がん薬の催吐性リスクは,高度,中等度,軽度,最小度の4 段階に分類される。良好な治療アドヒアランスを得て,がん治療を円滑に進めるためにも,催吐性リスクの適正な評価と個々の症例に応じた予防的対処を行う必要がある。

悪心・嘔吐を予防するため、5-HT3 受容体拮抗剤、デキサメタゾン、選択的NK1 受容体拮抗剤等の制吐 ..

がん薬物療法で使用する基本的な制吐薬には5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン,オランザピンの4 剤があり,これらを催吐性リスクによって使い分ける。催吐性リスクに応じた適切な制吐療法を行っているか,制吐療法実施のための体制が整備されているかは,重要な施設評価のポイントとなり得るので,施設全体で取り組む必要がある。

[PDF] 化学療法により誘発される悪心・嘔吐(CINV)が患者

アプレピタントは、薬物代謝酵素であるcytochrome P450 isoenzyme 3A4 (CYP 3A4) を軽度から中等度に阻害するため、デキサメタゾンの代謝消失を阻害することが知られており、デキサメタゾンのAUC (濃度時間曲線下面積) が増加することが知られている。そのため、アプレピタントとデキサメタゾン併用時には、デキサメタゾンの減量調整が必要となる。
高度催吐性リスクに対して、従来の5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの2剤併用療法のおけるデキサメタゾンの推奨用量は、16~20mg (注射薬13.2~16.5mg) とされてきたが、アプレピタントとの併用例では、12mg (注射薬9.9mg) へ減量する。ただし、コルチコステロイドを抗癌剤として使用するCHOP療法などでは減量はしない。アプレピタントの投与期間は通常3日間であるが、効果不十分の場合には5日間までの追加投与が可能である。

制吐薬の変更、他の作用機序の制吐薬、ステロイドの追加をする。 4

また,制吐療法以外の支持療法や併存症に対する治療薬を併用している場合も多く,薬物相互作用によるそれぞれの薬効の変化も考慮した薬剤選択や用量調整が必要である。

[PDF] 選択的NK1受容体拮抗型制吐剤 アプレピタントカプセル

経口抗がん薬による催吐性リスクについては に示す。経口抗がん薬は近年,数多く製造販売承認されており,悪心・嘔吐を含む有害事象の情報を集めたうえで適切な制吐療法を行う。